呼吸ケアリハビリテーション

理学療法士・小林美穂先生
はじめまして、御茶ノ水呼吸ケアクリニックの理学療法士・小林美穂と申します。皆様は呼吸リハビリをご存知ですか?また、何か運動は行っていらっしゃいますか?今回より12回シリーズにわたって、私どものクリニックで日ごろ私が患者様と一緒に行っているリハビリ内容や、ご自宅でできる運動などをご紹介させて頂きたいと思います。
はじめに、今よりもう少し動けるようになったら何がしたいか、目標を立ててみて下さい。「自宅のお花の世話をする」「趣味のもの作りをする」「近所で評判のパン屋さんへ行く」「家族と温泉旅行に行く」…何でも構いません。
何がしたいか思いついたら、今回の連載からその目標に向かって一緒に挑戦してみましょう!
1.腹式呼吸 「呼吸を整えましょう」
第1回目のテーマは、「腹式呼吸」です。
呼吸は胸郭と横隔膜(おヘソからみぞおちの高さくらいにある呼吸に使う筋肉)によって行われていますが、 このうち横隔膜の役割が大きく、全体の約60-80%を占めています。効率よく呼吸するためには、 この横隔膜を使った腹式呼吸をする必要があります。しかしこの腹式呼吸、すでにご存知の方は多いのですが、 あまり上手にできていない方が少なくありません。特に呼吸器疾患の方は動いたときに息切れが出現する場合が多く、 いかに効率よく呼吸をするか、息切れしないように呼吸を整えるか、という「呼吸法」も、 日常生活における大切なポイントになります。
☆腹式呼吸の練習方法☆
- 仰向けまたは椅子に座った状態で、まずはゆっくり大きな呼吸を意識します。
- 仰向けの場合(写真1.1)は腹部(一番動きが分かりやすいところ)に利き手または0.5〜1kg程度の錘を置き、 お腹が膨らんでくるようにゆっくり息を吸います。このときお腹で錘を持ち上げるようにするとうまくいきます。
椅子に座っている場合(写真1.2)は、おヘソとみぞおちの間くらいに利き手を当て、 お腹が少し膨らんでくるようにゆっくり息を吸います。座って行う場合は、仰向けよりもやりにくくなることがあるので、 あまり無理に吸おうとせず、少しお腹が膨らむ程度から始めましょう。 仰向けになると、かえって息苦しくなる方は、座ったままでも十分です。 また、利き手を当てるのはお腹の動きを確認するためですので、掌で圧迫せず、軽く当てる程度にしましょう。 - 続いて息を吐くときは、口を軽くすぼめてゆっくりと自然に最後まで吐きます。 口をすぼめるといっても、きつくすぼめて強く吐くのではなく、 口笛を吹くような気持ちでごく軽くすぼめて楽に吐きます(口すぼめ呼吸)。
この腹式呼吸練習を、起床時や就寝前、お茶のときやテレビを見ているときなど、1日1回、5分程度行ってみましょう。 慣れてきたら時間を延ばしたり1日の回数を増やしたり、立っているときや動いているときに意識して行ってみてください。 目標は歩行中や運動中にできることですが、まずは仰向け、座っているときに練習し、徐々に慣らしていくと良いでしょう。 疲れない程度に、時々休憩しながら試してみて下さい。 またお腹に置く錘は、トレーニング用のものは大型のドラッグストアや家電ショップのスポーツ用品売り場などで購入できますが、 自宅にあるものでも十分活用できます。お勧めは四角型の500mlペットボトルにぬるま湯を入れたものや、 軽めの辞書や書籍などです。
写真1.1(仰向け)

- 両肘は浮かさず、ベッドやマットに置いたままにします。
- 両膝は立てるか、膝の下に足枕を入れると腹筋の緊張が適度に緩み、腹式呼吸しやすくなります
- 利き手は、腹部の一番動きが大きい場所(概ねおヘソとみぞおちの間くらい)に置くと分かりやすいでしょう。あまり下腹過ぎると分かりにくくなります。
写真1.2(座位)

- 椅子は、背もたれのあるもの・ないもの、どちらでも構いません。ベッドの端に座ってもできます。
- 少し浅めに座り、辛くない程度に軽く背筋を伸ばします。肩の力を抜いて、腹部に利き手を当てましょう。深くもたれ過ぎたり、強く背中を丸めてしまうとやりにくくなりますのでご注意ください。
☆今回のポイント!!☆
『いざというときにご自分で呼吸をコントロールできるよう、少しずつお腹の呼吸を意識してみましょう!』
2.頸部〜肩甲筋のストレッチ 「上半身のストレッチ」
呼吸に関係する筋肉は、前回ご紹介した横隔膜だけではなく、頸や腕、肩や胸にもついています。 これら上半身の筋肉は、普段はあまり呼吸に関与しませんが、 日頃から胸や肩を使った呼吸(胸式呼吸・努力呼吸などといわれています)を続けていると、 常に筋肉が不必要に緊張し収縮している状態となり、徐々に上半身が硬くなってしまいます。 すると、今度は硬くなった胸郭を動かして無理に呼吸することとなり、 さらに息苦しさが出やすくなるという悪循環になってしまうのです。
今回は、呼吸に関係する上半身の筋肉を柔らかくし、 胸を広げて呼吸しやすくするためのストレッチをご紹介いたします(椅子に座っても、立ったままでも行えます)。
☆上半身のストレッチ☆「1. 頸のストレッチ」
☆上半身のストレッチ☆「2. 肩〜肩甲帯のストレッチ」
- 両肩を耳に近づけるイメージでぎゅーっとすぼめて持ち上げます(写真2.2.1)。 その後すとんと力を抜いて楽にします(写真2.2.2)。
- 次に両手を腰の後ろで組み、胸を大きく広げるように反らして(写真2.2.3)・・・戻します(写真2.2.4)。
- 続いて両手を胸の前で組み、猫背をするように背中をぐっと丸めて(写真2.2.5)・・・戻します(写真2.2.6)。
「3. 体幹のストレッチ」
- 右手を頭、左手を腰にあて(写真2.3.1)、右脇腹を延ばすように身体を左へ傾けます(写真2.3.2)。 このとき身体をねじらず、真横へ傾け、肋間を開くようなイメージで伸ばしましょう。
- 元に戻したら左右の手を変え、同様に反対側の脇腹も伸ばします(写真2.3.3〜2.3.4)。
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写真2.3.1 ![]() |
「はにわ」のポーズで右手を頭、左手を腰に当てます。 |
写真2.3.3 ![]() |
左右の手を変え、同様に左脇腹を伸ばします。 |
写真2.3.2 ![]() |
肋骨の間を開き、右脇腹の筋を伸ばすイメージで身体を左へ倒します。このとき身体はねじらず、真横へ倒すように意識しましょう。 |
写真2.3.4 ![]() |
☆今回のポイント!!☆
『胸郭が硬くなると呼吸もしにくくなります。上半身の筋肉を伸ばして、柔らかく動きやすい胸郭を目指しましょう!』
3.上肢の筋トレーニング(1) 「腕の体操をしましょう」
一般的には、腕は脚の筋力に比べると筋力低下を起こす割合が低いとされていますが、これは、日常生活の中で食事や着替え、入浴や物を持ったりする際に腕を使うためです。しかし、そうは言っても、やはり筋力は少しずつ低下していきます。
日ごろ私が皆様のお話を聞いていると、多くの方が「お風呂で髪や身体を洗う」「洗濯物を干す」「布団の上げ下げ」「荷物を持つ(スーパーの買い物)」など、腕を肩より挙げたり力を入れる動作で息苦しさを感じています。この息切れの原因は、呼吸法がうまくできていなかったり体力自体が落ちてしまっていたり、様々な原因が考えられますが、腕の筋力低下もそのひとつと考えられます。
筋肉には、
- 普段よりも強い負荷がかからないと強くならない性質(過負荷の原則)
- 鍛えたところだけが強くなる性質(特異性の原則)
- 運動を止めてしまうと元に戻る性質(可逆性の原則)
というものがあります。そのため、今よりも筋肉を強くしたい場合、普段の生活よりも強い負荷をかけ、鍛えたいところを集中的に、継続して運動するということが必要なのです。いつも通りの生活を続けていたり、途中でやめてしまえば筋力は低下していきますし、荷物を持つのが大変な方は腕の筋肉を、歩くのが辛い方は脚の筋肉をそれぞれ鍛えていかなければいけません。いくら脚の運動をしても腕の筋肉はついてこないのです。
脚や体幹(主に腹筋・背筋の部分です)の筋力はとても大切ですが、まず今回は腕の筋肉を鍛える筋力トレーニングの体操をご紹介いたします。
【用意するもの】
- 体操に使うおもり:あればトレーニング用の錘500g-1kg程度(なければ500mlのペットボトルに水や砂などを入れたもの)
- 必要な方は、お水やタオルなど
【気をつけたいこと】
- 息切れが強い方は、最初は何も持たずに行いましょう。また、片腕ずつでも行っても良いでしょう。
- どこの筋肉を鍛えているのかイメージしながら行ってみましょう。
A.座位又は立位でできる体操
1. 肘を曲げる運動 〜二の腕の内側を意識しましょう〜
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1.錘を片手または両手に持ちます。 | ![]() |
2.肘をゆっくり曲げ、曲げきったらゆっくり戻します。 |
2. 腕を高く挙げる運動 〜腕や肩、胸の前側を意識しましょう〜
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1.右腕に錘を持ちます。 | ![]() |
3.両腕をゆっくり下げます。 |
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2.両腕を横に挙げていき、頭の上で錘を左手に持ち替えます。 |
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4.再び両腕を横に挙げてゆき、今度は左手から右手に錘を持ち換え、ゆっくり下げます。 |
B.仰向けでできる体操
1. 肘を伸ばす運動 〜二の腕を意識しましょう〜
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1.仰向けになり、片手または両手に錘を持って肘を曲げておきます。 | ![]() |
2.手を天井に突き上げるように肘を伸ばし、ゆっくりと戻します。 |
2. 腕を横から挙げる運動 〜二の腕、肩、胸の前側を意識しましょう〜
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1.両手に錘を持ち、腕を90度ほど横に広げておきます。 |
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3.腕をゆっくり横に戻します。 |
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2.肘は伸ばしたまま、両手の錘同士を合せるように横から顔の上まで腕を挙げます。 |
3. 腕を前から挙げる運動 〜二の腕・前胸部・肩甲骨付近を意識しましょう〜
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1.両手に錘を持ちます | ||
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2.肘は伸ばしたまま、万歳をするように両手を頭の上まで挙げます。 | ||
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3.腕をゆっくり下ろします。 |
各運動ともに10回=1セットとし、できれば1日1〜2セットずつを目標とします。毎日続けて頂く方が効果的ではありますが、最初は週に2〜3回、「月曜と木曜」など曜日を決めて行うと取り組みやすいと思います。すべての運動を通してできる方は全部挑戦して頂いて結構ですが、息切れが強い方や疲れが出る方は、仰向けの体操から始めたり、回数を半分にしたり、できそうなものを1〜2つ選んで行ってみてください。
☆今回のポイント!!☆
『二の腕・肩・胸の前側・肩甲骨周辺など力を入れている部分を意識し、少しずつでも続けていくことを心がけて運動しましょう!』
4.下肢の筋力トレーニング(1)「脚の体操をしましょう」
皆さまこんにちは、御茶ノ水呼吸ケアクリニックの理学療法士・小林美穂と申します。
J-BREATH第37号より、こちらのコーナーで運動をメインとした呼吸リハビリについてご紹介させて頂いておりますが、今号から「はじめまして」の方もいらっしゃいますでしょうか。
前回のコーナーでは、上肢(腕)の筋力トレーニングについていくつかご紹介しましたが、今回は私が普段、患者様と一緒に特に意識して行っている下肢(脚)の筋力トレーニングについてご紹介致します。
筋肉は鍛えなければどうしても細く弱くなってしまうのですが、上肢にくらべて下肢の筋力は特に低下しやすいといわれています。同じ年代の方同士でも、普段からよく歩く方と、家の中で過ごしがちな方とでは、当然体力も筋力も差が出ます。また、呼吸器疾患の方のなかには、下肢筋力の低下により歩行時に息切れしてしまうという方もいますし、散歩ができるくらいの体力はあっても筋力は弱いという方もいます。下肢の筋力が低下しはじめると、徐々に歩ける距離が短くなったり階段や坂道を上りにくくなっていきますが、さらに低下が進むと、近所へ出かけるのが精いっぱいになったり自宅内を動く程度になってしまいます。そして一番怖いのは、廃用症候群という寝たきり状態を引き起こしてしまう可能性があるということです。よく「家のなかのこと(家事炊事)をするので頻繁に動いています」と言われる方もいらっしゃるのですが、油断は禁物。逆に考えれば、動ける範囲が自宅内に止まっている、ということになるのです。
意識しないと足腰はどんどん弱くなってしまいます。前回ご紹介した「運動の3原則」、
- 普段よりも強い負荷がかからないと強くならない性質(過負荷の原則)
- 鍛えたところだけが強くなる性質(特異性の原則)
- 運動を止めてしまうと元に戻る性質(可逆性の原則)
を思い出しながら、この機会に「脚を鍛える」ことを意識してみてください。
A.仰向けでできる体操
1.片脚ずつ上げる運動
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1.仰向けに寝た状態で、片脚を床から30cmほどの高さまで上げます。上げた脚の膝はしっかり伸ばし、つま先は脛に向かって反らせましょう。
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2.腿の筋肉に力を入れるよう意識し、ゆっくり5秒間、脚を上げたまま保ちます。
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3. 5秒数えたらゆっくり脚を下ろします。 ※左右10回ずつを1セットとします。 |
B.座ってできる体操
2.膝を伸ばす運動
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1.椅子やベッドに座った状態で、片膝をまっすぐ伸ばします。つま先は脛に向かって伸ばしましょう。
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2.腿の前面の筋肉に力を入れるよう意識し、5秒間、膝を伸ばしたままで保ちます。
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3.ゆっくり膝を元に戻します。 ※左右10回ずつを1セットとします。できれば背もたれにもたれたり猫背にならず、背筋を軽く伸ばしましょう。 |
3. 腿を上げる運動
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1.椅子やベッドに浅く座った状態で、軽く背筋を伸ばします。
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2.その場で大きく足踏みをするようにゆっくり腿を上げ下げします(f)。腿や膝をお腹に引き寄せるようなイメージで、ゆっくり大きく行うよう意識しましょう。 ※左右交互に数えて20回までを1セットとします。 |
B.立ってできる体操
4.つま先立ち運動
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1.椅子の背やテーブル、壁などに軽く手を添えて立ちます。
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2.ふくらはぎの筋肉に力を入れるよう意識し、真上に上がるイメージでつま先立ちをします。膝を曲げたりお腹を前に突き出して行うと、上手にふくらはぎの筋肉が鍛えられませんので注意しましょう。 ※10回を1セットとします。 |
5. スクワット運動
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1.両腕を肩の高さまで前方に突き出すか、または動かないもの(テーブルや手すりなど)に手を添えて立ちます。
椅子の背もたれにつかまっても良いですが、座面に重いものを置くなどして椅子が動かないように注意して下さい。
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2.膝がつま先より前に出ないように、洋式トイレに座るイメージでゆっくり「1.2.3.4」と数えながら腰を落としていきます。 |
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3.できる方は腿の高さが床と平行になるくらいまでを目指します。
きつい方は膝がつま先より前に出ない程度までで良いですので、腿やおしり周りの筋肉を意識し、
腰を落とした状態で「5.6」と保ちます。
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4.「7.8.9.10」とゆっくり数えながら膝を伸ばしていきます。 膝は完全に伸ばしきらず、少し曲がったところで留め、そこから2回目を始めるとより効果的です。 ※10回を1セットとします。 |
1〜5をそれぞれ1日1セットずつ行えることが望ましいのですが、息切れが強い方や翌日も脚の疲労感が非常に強く残る方は、仰向けや座ってできる体操から始めましょう。毎日でなくても「週に2-3回」など頻度を少なめにすると行いやすいかもしれません。
また、前回の腕の体操と同様に、運動中は呼吸を止めずに、ご自分で数を数えながら行うよう気を付けてください。数を数えながら行うことで、息を吐きながら動作を合せ、息切れを起こしにくくすることができます。
今回の脚の筋力トレーニングは、皆様に特に行って頂きたい運動のひとつです。最初はきつく感じるかもしれませんが、続けていくうちに少しずつ筋力がアップしていきますので、ぜひこのトレーニングを普段の生活のなかに取り入れてみてください。
☆今回のポイント!!☆
『脚を鍛えることで、歩行時や階段・坂道の息切れ軽減が期待できます。階段・坂道に負けない足腰を目指しましょう!』
5.体幹(腹筋・背筋)の体操しましょう
こんにちは。皆さま風邪などひかずにお過ごしですか?
さて、J-BREATH39号・40号では腕と脚の筋力トレーニングについて掲載致しましたが、今回は体幹の筋力トレーニングについてご紹介させて頂きます。
「体幹(たいかん)」という言葉はあまり耳慣れないかもしれませんが、体の幹という字の如く、主に身体を支える腹筋や背筋などの胴体のことをさします。体幹の筋肉は、立ったり座ったり歩くときの姿勢を保つのはもちろん、少し分かりにくいですが呼吸にも関与しています。腹部には主に息を吸うときに使う横隔膜や、息を吐くときに使う腹横筋・腹直筋・内外腹斜筋などがありますが(他にもいくつかありますが、これらは呼吸筋といわれています)、効率的に呼吸するために、これらの筋群が胸郭を広げたり元に戻したりする手助けをしているのです。また、腹筋や背筋群が弱くなると、腰痛を引き起こしたりお腹周りに余分な脂肪をつけてしまう原因にもなり得ます。これらの筋肉も手足の筋肉と同様に鍛えれば強くすることができるのですが、方法に少し注意が必要です。無理にお腹に力を入れて息を吐き出すような間違った腹式呼吸を続けていたり、呼吸の仕方が上手ではなく慢性的に呼吸筋を使用しているような場合は、必要以上に筋肉が緊張し疲労しているため、過剰な筋力トレーニングはかえって逆効果になりかねません。筋肉が疲労してうまく使えていないのであれば、休ませてあげることが必要ですし、そうではなくて筋肉が弱って働きにくいのであれば、しっかりと鍛えなければいけないということです。
「筋肉を休めること」と「筋肉を鍛えること」、相反するものですが、今回は鍛える方に焦点をあて、以下にその体操をご紹介いたします。毎回お知らせしているように、体操を行っているときは息を止めず、できれば吐きながら行うように意識してみましょう。また回数などはあくまでも目安ですので、ご自分でできる範囲に調整してみて下さい。
1.おしり上げ Part1
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1.仰向けになり両膝を立てます。
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2.腹筋や腰回りを意識しながらおしりを持ち上げ、下ろします。おしりを上げたときは胸・骨盤・太ももが一直線になるくらいを目安としましょう。
※ゆっくり10回行います。 |
2.おしり上げ Part2
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1.仰向けになり片膝を立てます。もう一方の膝は伸ばしたまま、床から浮かせます(立てた膝の高さくらいまで)。
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2.Part1と同様におしり上げします。Part1よりもバランスを崩しやすいので、ふらついてしまう方は床に両手を付くなどしてご注意ください。。
※立てる膝を変えて左右10回ずつ行います。 |
3. 腹筋運動 Part1
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1.仰向けになり両膝を立て、骨盤の下に丸めたタオルなどを置きます。
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このときタオルを置く位置が背中側やおしり側になりすぎないよう注意しましょう |
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2.タオルを骨盤で床に押さえつけるようなイメージでお腹に力を入れます。
手のひらをお腹に添えて、お腹が硬くなっているか(腹筋が収縮しているか)確認しながら行うと良いでしょう。ゆっくり5秒数えたら力を抜きます。 ※10回行います。 |
4.腹筋運動 Part2
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1.仰向けになり両膝を立て、両手は膝を目指すように伸ばします。
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2.おへそを覗き込むくらいに頭を上げ、腹筋をしっかりと意識します。
息を止めず、吐きながら頭を上げましょう。自分で数を数えながら行うとうまく呼吸と合わせられます。
※ゆっくり10回行います。 |
5. 四つ這い運動
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1.両手と両膝をついて四つ這いの姿勢をとります。このとき肩や膝が90度になるようにします。
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2.右手をまっすぐ前に伸ばして顔を上げ、5〜10秒数えたら下ろします。
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3.上記2と同様に左手・右脚・左脚とそれぞれまっすぐ伸ばして5〜10秒ずつ数えます。
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4.余裕のある方は、右手と左脚、左手と右脚のように、交差して伸ばして5〜10秒数えましょう。
腹筋や背筋を意識し、バランスをとりながら行ってください。
※それぞれ1回ずつ行います。 |
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1〜5をまとめて1セットとし、1日1〜2セットを目標とします。 ただし全部行うと少しきついかもしれませんので、回数を少なくしたり行いやすいものを選んだり、 ご自分に合わせてアレンジしてみましょう。
なお、腰痛がある方は無理に行うと増悪する可能性もありますので十分ご注意ください。 もし行った翌日に痛みが強くなっていたり熱を持ち始めたら、それ以降は行わず、しばらく様子を見てください。 それでも痛みが治まらないときは整形外科への受診をお勧め致します。
☆今回のポイント!!☆
『腹筋や背筋に語りかけるように、意識してゆっくりと行い、すっきりとした腰回りを目指しましょう!』
6.栄養 —夏—
はじめまして、御茶ノ水呼吸ケアクリニックの看護師、川崎恵美と申します。
しとしとと降る雨にあじさいの花がますます美しく見える今日この頃。皆様は、季節の変わり目など体調を崩さず過ごされていますか?最近なんとなく、体重が減ってきたなと感じたり、以前よりも息切れを感じやすくなったりしていませんか?
今回より、夏と冬の2回にわたって、慢性閉塞性肺疾患(COPD)の患者様が病気と上手に付き合いながら、毎日をより快適に過ごしていくために不可欠である栄養と食事についてお話しをさせて頂きたいと思います。COPD以外の呼吸器疾患の患者様方でも、体重が減ってきたと感じる皆様は参考にして下さい。また、糖尿病などその他の疾患をお持ちの皆様は、特別な食事療法が必要な場合がございますので主治医にご相談ください。
夏のテーマは 「十分な栄養をとりましょう」 です。
栄養はなぜ大切?
まず、COPDの患者様にとってどうして「栄養」が大切なのでしょうか?
COPDの患者様は、機能が低下した肺の動きを補おうとして呼吸筋を一生懸命動かすため、 健康な人よりも呼吸するために多くのエネルギーが必要となります。 また、肺の過膨張により横隔膜が胃を圧迫するため、沢山食べると横隔膜を持ち上げて苦しくなるため、 少量の食事を摂取するだけですぐにお腹がいっぱいになります。 そして身体を動かすことによって、息切れを感じるようになると、必然的に身体を動かすことを避けるようになり、 その結果、足腰の筋力が衰え、運動不足になり食欲も低下してきます。 さらに食事中も食べ物を噛んだり、飲み込んだりする際に、呼吸が乱れることで息苦しくなり、 食べる量が減ってしまいます。
このように、エネルギーを多く消費する状態にあるにもかかわらず、十分な栄養を摂取できず栄養不足の状態が続くと、 どのようなことが起こるでしょうか?
徐々に体内の筋肉や脂肪が減少し、体重が減っていきます。そして免疫機能も低下して呼吸器感染症に罹る頻度も高くなり、 病態が急速に悪化する「急性増悪」を引き起こしやすくなります。
したがって、このような悪循環に陥らないよう、体重を維持したり増やしたりして体力・免疫力を高め、 痩せない身体をつくるために十分な栄養をとることがとても大切になります。 ただ、肥満傾向にある患者様は、肥満を解消することが大切です。また、十分な栄養をとることは、日頃、 皆様が励まれている呼吸リハビリの効果をさらに高めることができ、息切れを和らげることに繋がります。
ぜひ、この機会にご自身の栄養状態を見直してみましょう!
痩せとは?
痩せの評価方法はいろいろありますが、今回は標準体重からわりだす評価方法をご紹介します。 まず、ご自分の現在の状態を評価してみてください。
標準体重は、身長(m)×身長(m)×22 で表されます。
下表のように、マイナス10%未満を「痩せ」とします。
判定 |
痩せ |
普通 |
過体重 |
肥満 |
肥満度 |
-10%未満 |
-10% 〜 10%未満 |
10% 〜 20%未満 |
+20.5%以上 |
ただし、問題となる痩せは、急激な体重減少のときです。 常に痩せている方が痩せのところに入っていても急激な変化とはなりません。すなわち、
体重減少率(%)=(平常時体重─現在体重)÷平常時体重×100
上記の式で、6ヵ月で体重が10%減少、もしくは1ヵ月の体重が5%減少したときは、問題となる痩せです。 心当たりのある方は、要注意です。また、そこまで痩せていない方も食欲が低下してきていたら注意が必要です。
栄養摂取のポイント
では、実際に、日頃どのようなポイントに気をつけて栄養を摂ったらよいでしょうか?それには4つのポイントがあります。
1.エネルギー消費量に見合う十分なカロリーをとりましょう。
はじめにお話しましたように、COPD患者様方は健康な人よりも呼吸するために多くのエネルギーが必要となります。 そこで、エネルギー消費量に見合う十分なカロリーを効率よくとるには、少量でカロリーの高い食品を選んで食べることです!
具体的には、ピーナッツバター、バター、ゴマ製品(練りゴマ、ごまだれ、ゴマ油)、 チーズ、マヨネーズ、ドレッシング、うなぎ、ベーコン、アボガド、アイスクリーム、チョコレートなどがおすすめです。 また、調理する際に食材を油で炒めることによって、さらにカロリーを高めることができます。 体格や性別・年齢、活動量などによって、1 日の総摂取カロリーは変わりますが、体重が減ってきたなと感じている方は、 おおまかな目安として、1日2000キロカロリー前後を目標に、体重の変動に注意しながら、摂取カロリーを調整しましょう!
ただし、炭水化物の多い食事は炭酸ガスを増加させ、動脈血液中に炭酸ガスを蓄積させやすいためCOPD患者様に不利に働きます。 特に炭酸ガスがたまり気味の患者様方は炭水化物を少な目にしてください。
2.良質たんぱく・高ビタミンを多くとりましょう。
良質なたんぱく質・ビタミンを多くとるためには、大豆製品、鶏肉(鶏胸肉)、マグロ(赤身)、 とうもろこし、たらこ、卵、チーズ、牛乳などがおすすめです。たんぱく質は、疲労回復を促進させたり、運動時の筋肉の維持や増量に重要な役割があります。 ビタミンは、呼吸器感染症を予防したり、体内でエネルギーをつくり出 すなどの働きがあります。 とくにビタミンE、ビタミンC、βカロテンなど抗酸化ビタミン類は肺損傷を軽減します。
具体的には、野菜、果物、豚肉、うなぎなどの食品に、豊富なビタミンが含まれています。 特に、初夏から夏の野菜は、身体を冷やし、夏バテを予防します。暑さで失われやすいビタミンCが豊富な野菜も多く採れます。 ぜひ、栄養と味覚のつまった旬野菜を食べましょう。 夏野菜では、トマト、ピーマン、オクラ、ゴーヤ、きゅうり、ナス、枝豆、とうもろこし、みょうが、大葉、などがおすすめです。
3.食事回数は状態に応じて増やしましょう。
COPD患者様の中には、食事をするだけで息切れがしてしまう方も多くおられます。 そのため、1回の食事で十分なカロリーをとることができない場合は、間食も食事と考え、 少量ずつ5〜6回に分けて食べるようにして、栄養をとるようにしましょう。
4.消化管内でガスを発生させるような食品はできるだけ避けましょう。
消化管内でガスを発生させるような食品は、腹部膨満の原因になりますので、 いも、納豆、キムチ、キャベツ、大根、ナッツ類、タマネギ、炭酸飲料(ビールも含む)、 豆類、リンゴなどは控えるようにしましょう。
メニュー
おわりに、夏におすすめのメニュー&レシピをご紹介します。
◎食事
*うな重
*ゴーヤチャンプルー
*バンバンジー
◎おやつ
*アイスクリーム
*わらびもち
*ヨーグルト
などです。
また、食事の系統別では洋食が良く、和食では、高脂質、高たんぱく質の肉・魚・卵・乳製品・大豆製品を 組み合わせてください。
バンバンジー(棒棒鶏)のレシピ
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<材料4人分>
・鶏胸肉・・・1枚(約220g)
・塩くらげ・・・100 g ・きゅうり・・・1/2本 ・プチトマト・・・4個 ・サラダ菜・・・4枚 【鶏肉の下味】
・白ねぎの青いところ・・・5cm
・しょうが・・・10g ・中華スープ・・・1/2カップ ・酒・・・大さじ2 ・塩・・・小々 【ごまダレ】
・すりごま(練りごま)・・・大さじ2
・ラー油・・・小さじ1 ・しょうゆ・・・大さじ3 ・しょうが・・・10g ・砂糖・・・大さじ3 ・にんにく・・・1片 ・酢・・・大さじ2 ・白ねぎ・・・4cm ・ごま油・・・小さじ2 |
〜作り方〜
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「冬の回」では、「食事中の呼吸困難を和らげる工夫」についてお話しする予定です。
7.上下肢の筋力トレーニング「腕と脚の体操をしましょう」
皆さまこんにちは、御茶ノ水呼吸ケアクリニックの理学療法士・小林美穂です。この時期は体調を崩して受診される患者様が多くなっていますが、皆様はいかがお過ごしでしょうか。私自身、この暑さには閉口気味の毎日ですが、手元に届くJ−BREATHを読んで、ラングウォークやスポーツ吹き矢、フライングディスク、朝の雀とのひとときや夜のお散歩など、皆さまの様子を伺いながら「バテてる場合じゃないなあ」とこっそり元気を分けて頂いています。
さて前回は食事や栄養についてのお話でしたが、今回は再び運動のご紹介をさせていただきたいと思います。当初の予定では「上肢の筋力トレーニング②」でしたが、少し内容を変更させて頂き、「上下肢の筋力トレーニング」として、今までご紹介した以外の体操についてお話致します。
第5回までは腹式呼吸・ストレッチ・錘を使用した筋力トレーニングや仰向け・座位などでの体操をご紹介致しましたが、今回は家事・炊事の合間などにもできる体操になります。この体操だけを行うことはもちろんですが、他のストレッチや筋力トレーニングに加えて頂いても問題ありません。おおよその回数や時間などは以下にご紹介いたしますが、毎回お話ししているように、強い息切れや疲労感・痛みが出ない範囲にアレンジして下さい。慣れてきたら「毎日続けられる」程度の設定を探してみるのも良いでしょう。難しい運動ではありませんので、一度チャレンジしてみてください。
1.壁腕立て伏せ(上肢の筋力トレーニング)
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1.両腕を壁に向かって伸ばし、手のひらを当てます。 | ![]() |
2.腕立て伏せをする要領で、息を吐きながら肘を曲げていきます。 二の腕〜肩にかけての筋肉を意識しましょう。 |
3.息を吐き切る前に肘を伸ばして元に戻ります。息が続かない方は無理に合わせなくても構いませんが、息堪えしないように注意しましょう。 ★1セット10回とします | |||
2.合唱ポーズ(上肢の筋力トレーニング)
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1.両手のひらを合わせ(合掌のようなポーズです)、肘を張ります。 |
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2.両手同士で押し合うように力を込め、5秒数えます。 息堪えを防ぐため、声を出して5秒間数えるか、息を吐きながら行うようにしましょう。二の腕〜胸の前側にかけての筋肉を意識しましょう。 |
3.力を抜いて肘を下ろします。 ★1セット10回とします |
3.片脚立ちPart1 「開眼」
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1.椅子の背やテーブル、壁などに手を添えて立ちます。 | ![]() |
2.右脚を高めに(腿の高さくらいまで)上げて10秒数えます。 |
3.反対も同様に行います | |||
4.片脚立ちPart2 「閉眼」
- 1.Part1と同様に右脚を上げ、今度は目を閉じて10秒数えます。
- 2.反対も行います。目を閉じるとフラついてきますので、転倒しないよう十分注意し、絶対に手を放さないでください。
- ★Part1、Part2ともに左右各1〜2回ずつ行います
☆今回のポイント!!☆
『様々な運動を組み合わせてご自身にあったパターンを作りましょう!
運動として行うのも、家事炊事などの隙間に行うのもご自分の好みで構いません!』
8.息苦しさを和らげる日常生活動作の工夫
皆さまこんにちは、御茶ノ水呼吸ケアクリニックの理学療法士・小林美穂です。夏の頃のお話になりますが、7月26日(日)東京・八重洲で行われた第15回J−BREATH講演会では、参加された患者様のお顔を拝見しながら直接お話をさせて頂き、大変有意義な時間を過ごさせて頂きました。「息切れ軽減に向けて自宅でできる体操」というテーマでお話をさせていただきましたが、熱心に聞かれている皆さまの様子から改めてリハビリに対する関心の高さを実感し、「より良いリハビリをご提案しなくては!」と引き締まる気持ちでした。
さて、今回は「息苦しさを和らげる日常生活動作の工夫」としまして、普段当クリニックに来られる患者様から聞かれることの多い、「息苦しくなる日常動作」について取り上げてみたいと思います。
皆さまそれぞれ、多少なりとも「これをすると息苦しい」という動作があると思いますが、私がよくお聞きするのが「階段・坂道の上り」「着替え」「入浴」の3つになります。また他にも、「布団の上げ下げ」「買い物などの荷物を持って歩く」「トイレ」など様々な場面が挙げられます。これらの動作で息苦しくなる原因としては、筋力・体力、周囲の物の配置、行う順番などがありますが、呼吸法と動作がうまく合っていないことも大きな問題と考えられます。
第1回以降、度々ご紹介している腹式呼吸・口すぼめ呼吸ですが、最も必要となるのがこの息苦しくなる動作のときです。しかしなかなか動きと腹式呼吸を合わせるのは難しく、急いで用事を済ませて後になって呼吸が上がってしまう、というパターンが多くみられます。息苦しさを感じる動作は個人差もありますが、今回は「着替え」「入浴」「トイレ」をメインに、息切れ軽減のための工夫をご紹介いたします。なお、階段・坂道については第11回に詳しくご紹介する予定ですので、そちらご参照下さい。
共通するポイント
- 息を吐きながら、急がずゆっくり動くよう心掛けましょう。
- こまめに休憩を入れながら行うようにしましょう。
1.着替え
- 着替えの衣類は机や台の上に置き、椅子やベッドに座って着替えます。
- 動作の方法を見直してみましょう。ズボンや靴下をはく際は、前かがみにならず、足を組むようにして腹部への圧迫を少なくしましょう。
- できるだけ無駄な動作は省くと効率よく動けます。パンツとズボンをはくときは、まずパンツに足を通し、ある程度引き上げておいてからズボンに足を通します。次に立ち上がってパンツとズボンをそれぞれ引き上げれば、立ち上がりは一回ですみます。
- 衣類の形・素材にもひと工夫。前開きの衣類や、伸縮性のあるゆったりとした服を選びましょう。背中にボタンやファスナー、フックのある衣類は避けましょう。

2.入浴
- 【脱衣場での着替え】
- 椅子などを用意し、十分休憩してから着替えをしましょう。
- 【体を洗う】
- 1.長めのタオルを使いましょう。タオルが短いと、背中を洗う時に腕が高く上がる、胸が張りすぎる等、 呼吸がしづらい姿勢をとらなくてはなりません。
2.高めの椅子を用意しましょう。風呂用の低い椅子に座って足を洗うと、腹部が圧迫されるので、高めの椅子を用意し、足を組むようにして洗いましょう。 また、タオルを洗うときに前かがみにならないよう、洗面器も膝か台の上に置くなどの工夫をしましょう。


- 【湯船に入る】
- 特に体を洗った後に入る場合は十分休憩してから湯船に入りましょう。湯船内では身体を冷やさないよう肩にタオルをかけたり、湯船用の蓋を半分ほど閉めてお湯の温度が低くならないよう工夫しましょう。また冬場は少し熱めにお湯を溜め、湯気で浴室内を暖めておくことも有効です。
- 【お風呂から出たら】
- 浴室から出たらまず、椅子に座って休憩してください。冬場は暖房器具で脱衣場を暖めておくとよいでしょう。少し休憩したら、椅子に座ったままゆっくり体を拭き、服を着て下さい。また休憩の際、湯冷めを避けるためにバスローブを羽織ることもよい方法です(保温とタオル地が水分を吸収するため、体を拭く動作が省略できます)
3.トイレ
- できるだけ洋式便座にしましょう。和式便座では座って休めないだけでなく、腹部を圧迫する息苦しい姿勢を長時間とらなければならず、立ち上がる動作も息苦しさを増します。トイレに行くだけで息苦しさを感じる方は、ポータブルトイレを利用するのもひとつの方法です。
- 少し休憩して落ち着いてから後の始末に取り掛かりましょう。
- 朝や就寝前にトイレと洗面を同時に済ます方が多いかと思います。二つの動作を続けて行わず、トイレ動作と洗面動作の間に休みを入れましょう。

どの動作でも、やはりとにかく早く済ませて早く休もうと急ぎがちになったり、呼吸を意識していなかったために余計に息苦しくなっている方が多いようです。呼吸が上がり脈拍が過剰に速くなってしまうと心臓や肺へ余計な負担をかけてしまうことになります。 24時間ずっと腹式呼吸をする必要はありませんが、ご自分で「よく息が切れる」と感じる動作の際は、呼吸法を思い出しながら、ゆっくり休みつつ行うよう心掛けてみてください。
☆今回のポイント!!☆
『急がず焦らず、時間と気持ちに余裕を持って、
ゆっくり呼吸と合せて日常生活動作を行ってみましょう。
ときどき腹式呼吸も思い出すとさらに効率的です!』
9.栄養 —冬—
皆様、こんにちは。御茶ノ水呼吸ケアクリニックの看護師、川崎恵美と申します。
立春とはいっても、まだまだ寒い日々が続きます。皆様は、風邪や昨年より大流行しているインフルエンザなどで体調を崩さず過ごされていますか?空気が冷たく、乾燥するこの季節、息苦しさを感じやすくなったり、なんとなく食欲がないと感じたりしていませんか?
さて、J-BREATH42号より夏と冬の2回にわたって、慢性閉塞性肺疾患(COPD)の患者様が病気と上手に付き合いながら、毎日をより快適に過ごしていくために不可欠である、栄養と食事についてお話しをさせて頂いております。夏の回では「十分な栄養をとりましょう」というテーマで、「COPDの患者様における栄養の大切さ」、「痩せの評価方法」、「栄養摂取のポイント」について掲載しました。
今回、お話しさせて頂く冬のテーマは「食事の呼吸困難を和らげ、十分なカロリーをとりましょう」 です。
COPDの患者様が食事から十分なカロリーをとりづらい理由とは?
まず、夏の回でもお話ししたように、COPDの患者様は日頃から機能が低下した 肺の動きを補おうとして呼吸筋を一生懸命動かすため、健康な人よりも呼吸するために多くの エネルギーを必要とします。
それゆえ、健康な人が呼吸を意識せず、何気なく行っている日常生活動作において、 COPDの患者様では、病気が進行するにつれてだんだん努力呼吸をしながら行うようになってきます。 そのため食事をするという動作場面で呼吸困難を生じたり、食欲不振や疲労感を伴うと、 ますます食事からのカロリーをとることが難しくなります。
また、肺の過膨張により横隔膜が胃を圧迫するため、たくさん食べると横隔膜を持ち上げて 苦しくなってしまい、少量の食事を摂取するだけですぐにお腹がいっぱいになります。さらに、食事中は食べ物を噛んだり、飲み込んだりするため、呼吸が乱れることでより息苦しくなり、 食べる量が減ってしまいます。ほかにも、腹満感や便秘、歯周病などの口腔内のトラブルが 食事摂取の妨げとなります。
したがって、このようなCOPDの患者様が食事から必要十分なカロリーをとるためには、 これらの症状を軽減し、食事中の症状を和らげることが大切になります。 次に、具体的な方法をご紹介致します。ぜひ、この機会にご自分でもできるかも! と思われる内容がございましたら、ご家庭で試してみましょう!
食事中の呼吸困難や諸症状を和らげる工夫
☆どうしても食欲がない
- カロリーが高いおかずから食べましょう。
- できるだけ自分の好きな食べ物をとり入れ、好きな物でカロリーをとりましょう。
- 残してしまったと思うと、さらに食欲がなくなってしまうので、 前もって食べられるだけの量をお皿に取りましょう。
- 1回の食事量を少なめにしましょう。間食を取り入れながら、 1日の摂取カロリーが高くなるようにしましょう。 (ただし、患者様の中には分食にすることで、1日中、食事の事を考えなければいけないといった 精神状態となり、ますます食欲がなくなる場合もありますので、 まずはどの方法が良いか実際にご自身で試してみてから、これなら自分に合っている! と思う方法を続けてみてください)
☆すぐにお腹がいっぱいになってしまう
- カロリーの高いおかずを優先して食べましょう。
- 食事中の水分は控えましょう。
- 残してしまったと思うと、さらに食欲がなくなってしまうので、 前もって食べられるだけの量をお皿に取りましょう。
- 炭酸を含んだ飲み物は避けましょう。
☆食事中に息切れを感じる
- 慌てず、少しずつゆっくり噛んで飲み込みましょう。
- 飲み込んだ後は口すぼめ呼吸をして、ある程度呼吸が整ってから、次のおかずを食べましょう。
- 食事中の無駄な動作を最小限にするため、おかずはあらかじめ食べられる分だけを 一つのお皿に取り分けておき、食器は軽いものを使いましょう。
- 食器を持ったままの姿勢で噛むという動作は、息切れが強まります。 そのため、食器を一度置いたり、ご自身が楽に感じられる姿勢で噛むようにしましょう。
☆食事中に疲労感がある
- 食事の前には十分に休養して、ゆっくりと食事をとりましょう。
- 食事を準備する際は、簡単で短時間にできるものを用意し、できるだけ手間をかけないようにしましょう。
- 疲労感の少ない時間帯にできるだけ食事をとるようにしましょう。
- 食事中の動作を単純化し、負担を少なくしましょう。
☆腹満感や便秘がある
- 息切れを和らげ、空気の嚥下を避けましょう。
- 急いで食べないようにしましょう。
- ガスを産生する食べ物、食材は避けましょう。 (いも、納豆、キムチ、キャベツ、ナッツ類、たまねぎ、炭酸を含んだ飲み物など)
- 便秘の方は適度な運動と食物繊維の多い食べ物をとるようにしましょう。 (きのこ類、今の時期は冬の野菜であるブロッコリーや白菜などもお勧めです。)
☆口腔内にトラブルがある
- 歯周病がある方は、適切な歯科の治療を受け、 ご自身でも食後は歯磨きなどの口腔ケアをしっかり行いましょう。
- 義歯を使用している患者様の中には、最初は合っていた義歯がだんだん 年齢とともに歯茎が痩せて合わなくなり、食事の時もそのまま装着せずに食べていたり、 装着できても痛みを伴い我慢して騙し騙し食べている方もいらっしゃるかと思います。 そのような患者様はそのままにせず、ぜひ、歯科で適切な治療を受け、義歯の調整をしましょう。
簡単!豆乳鍋のレシピ
<材料2〜3人分>
・豚肉(しゃぶしゃぶ用)・・・約250g
(鮭やタラ、カキなど、旬の魚介類で応用してもOK) ・豆腐・・・1丁 ・白菜・・・1/4株 ・水菜・・・1把 ・生しいたけ・・・6個 ・長ネギ・・・2本 [豆乳だし] ・豆乳・・・500cc ・水・・・100cc ・コンソメの素・・・2個 |
〜作り方〜
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☆その他のおすすめメニュー☆
食事・・・煮込みうどん、きのこの炊き込みご飯
おやつ・・・お汁粉・ぜんざい、みかん、チョコレート など
10.ステップ運動「階段…昇れますか?」
皆さまこんにちは、御茶ノ水呼吸ケアクリニックの理学療法士・小林美穂です。暖かくなって過ごしやすい季節に...と申し上げたいところですが、皆さま花粉症に悩まされてはいませんか?小学生時代から花粉症と付き合ってきた私にとって、この時期は痒みに鼻づまりに涙目と顔中が大変な騒ぎになり、載せて頂いている写真とは人相が変わっております。早く花粉の飛散がおさまってくれるよう願う毎日です。
さて、今回のテーマ「ステップ運動」ですが、当クリニックのリハビリに来られる患者さまのなかにも「階段が昇れない」「坂道がきつい」と言われる方がたくさんいらっしゃいます。平地を歩くことはできても階段や坂道になるともう…という具合です。階段・坂道が昇れない、昇ると息切れがひどくなる、という原因のひとつには下肢の筋力低下があります。坂道・階段の昇りは下肢全体の屈伸運動であり、自分自身の体重を持ち上げて歩くような状態になるため負荷が大きくなり、細く弱った脚では支えきれずに苦しくなってしまいます。また、平地歩行より坂道・階段の方が運動強度としては強くなりますので、それだけ体内で使う酸素の量(酸素消費量)が多くなります。たくさん酸素を使うのでそのぶんしっかりと呼吸して十分な酸素を取り込みたいところですが、肺の機能が低下していたり腹式呼吸が上手くできなかったりするとそうもいきません。限られた酸素で負荷の強い坂道・階段を上るので平地よりさらに息切れが強くなってしまう、ということです。
では、どうすれば良いでしょうか?答えはシンプル。坂道・階段を昇るために使う下肢の筋肉を強くすればよいのです。「あたり前だ」と思われるかもしれないのですが、いくら腕の筋力トレーニングを頑張っても、呼吸法を完全にマスターしても、残念ながら下肢の筋力をアップさせなければ階段を昇るときの息切れは軽減しにくいのです。また、苦手な科目を勉強しないと点数が下がってしまうように、日頃から階段を避けてしまうと知らず知らずのうちに階段を昇れないくらい筋力が弱っていってしまうのです。
以下に坂道・階段を昇るために使う筋肉を鍛えるステップ運動(踏み台昇降)についてご紹介しますので、普段のリハビリのなかに取り入れてみてください。なお、J-BREATH第40号でお話しさせて頂いた下肢の筋力トレーニングも昇降運動のためのベースづくりとなりますので、そちらもご参照ください。
用意するもの
- 10cm〜20cmほどの踏み台
- 踏み台がない場合は自宅の階段・あがりかまちなどを利用しましょう。不要となった電話帳2-3冊をガムテープでしっかり固定したものを使っている方もいらっしゃいます。
方法(左右どちらの足から昇っても構いません)
- 踏み台(階段)の前に立ち、まず息を吸います。
- 次に息を吐きながら右足から昇り、
- 次に左足をあげます。
- 続いて右足を降し、
- 左足を降します。
注意して頂きたいこと
- 吐く息が続かないという方は、[3]の時点でもう一度息を吸い、そして吐きながら④⑤と降してみましょう。
- 転倒予防、息切れ軽減のために、壁やテーブルなどに手をついて支えながら行いましょう。
- テンポを速くすることよりも、息苦しくならずに昇降できることを心がけてください。
[1]〜[5]までを1回とし、10回1セット、1日1~3セットを目標に行ってみてください。息切れがひどい方は、回数を半分にしたり、週に2〜3セットを目標にするなど負荷を急に増やさずできる範囲から始めてください。逆に物足りないという方は、台を高くしたりセット数を増やし、積極的にトレーニングしていきましょう。呼吸に関しては腹式呼吸が理想的ですが、難しい場合は深呼吸でも構いません。ただし腹式呼吸と動作を合わせながら行うと、運動強度を低くし省エネの呼吸で昇降することができますので腹式呼吸をお勧めしたいと思います。
自信がついたら、「外出したときや駅を利用するときは、1階分だけ階段を昇る」「お散歩コースにわざと階段や坂道を入れる」などレベルアップを図ります。「息苦しくなるから」と避けて何もせずにいるとますます悪化してしまいますので、時間をかけて少しずつ階段を昇れる身体に慣らしていけるよう意識してみてください。
☆今回のポイント!☆
腹式呼吸とステップ昇降運動で階段・坂道を克服しましょう!昇れるようになるとエレベーター・エスカレーターを探す手間が省け(るかも)、活動範囲が広がっていきます!
次回はいよいよ最終回、「歩行~少し歩きませんか?~」というテーマでお話しさせて頂きます。
11.歩行運動「少し歩きませんか?」
皆さまこんにちは、御茶ノ水呼吸ケアクリニックの理学療法士、小林美穂です。この原稿を書いているときはまだ寒暖の差が大きな日が続いていますが、皆さまのお手元に届くころには梅雨の時期となっているでしょうか。それとも気候も落ち着いて少し過ごしやすくなっているでしょうか。リハビリ患者さんが帰られるとき、私がいつもお声掛けしているのが「風邪は引かんようにしとって下さいね」。いくら身体を動かしても、食事内容に気をつけても、風邪を引いてしまっては元も子もありません。地味ですが、うがい・手洗い・換気などは通年心がけ、風邪を引かないようお気を付け下さい。
さて、今回はいよいよ最終回、「歩行~少し歩きませんか~」というタイトルでお話させて頂きます。健康のため・体力づくりのためと分かってはいても、実際に行うのはなかなか難しいイメージの歩行ですが、皆さまはいかがでしょうか。クリニックでも「歩行」と聞くと「うーん…そうですねえ…」と渋い顔をされる方が多くいらっしゃいますが、歩行は場所を選ばず、特別な道具も費用もかからない運動として、できる限り皆さまにお勧めしています。また、米国胸部疾患専門医会(ACCP)/米国心血管・呼吸リハビリテーション協会(AACVPR)が2007年に発表した呼吸リハビリテーションガイドラインの中では、「COPDの運動療法は歩行に関わる筋群のトレーニングが必須」と強く示されています。
普段リハビリを行っているときも「歩けなくなった」と言われる方は非常に多く、下肢のトレーニングや歩行練習は積極的に行っていますが、歩けなくなるということは、生活の行動範囲が制限され、楽しみが減ったり動こうという意欲を低下させる大きな原因となりかねません。私の祖母の場合、60歳代までは一人で海外旅行に出かけるほど行動派でしたが、ある日自宅内の廊下で転倒、股関節を骨折。悪いことに入院中に肺炎も起こし、退院して自宅に帰ってきてからは消極的になり、70歳後半になった今では通院以外はほとんど自宅内で過ごすようになりました。会えるときはいつも「少しでも脚を使って」「歩けなくなったらつまらないよ」と声をかけていますが、あれだけ動けていたとしても、歩く機会が減ると少しずつ元気も体力も落ちていくのだと、身近に感じています。
1.行う頻度:週2〜3回できたら花丸
無理に毎日行う必要はありません。私も毎日しっかり歩きなさいと言われても、実行できる自信は…。目標は週に2〜3回、難しいという方は週に1回のペースでもOKです。体調や天候に合わせて行って頂ければよいと思いますが、ひとつご注意を。効果的に行うためにはできるだけ休息期間を長く空けないことが望ましいので、週の前半や後半に一気に行う(月・火に歩いてあとはお休み、など)よりも、1週間のうち万遍なく歩く(月・水・金に歩く、など)ことを意識してみましょう。
2.歩行時間:目標20分!でも最初は5分から
よく推奨されているのが連続20分歩行。ただし、いざ歩いてみると20分は非常に長く感じられますので、これから行ってみようという方は、まずは5分間を目標にしてみます。5分歩けるようになったら次の週は1分、また次の週は2分…と長くしていき、身体が慣れたら20分を目指しましょう。普段から歩行習慣のある方は30分、40分、1時間、と積極的にチャレンジしてみてください。呼吸はいつもの腹式呼吸、もしくは深呼吸をお忘れなく。
3.歩くスピード:多少息切れがするくらいの速さが理想
競歩のように速く歩く必要はありませんが、かといってまったく息切れも感じないくらいの歩き具合でも効果が得られません。そこで目安にしやすいのが修正Borg-scale(ボルグスケール)という、主観的な運動強度を数量化した指標です(表1)。この修正ボルグスケールは、10段階のうち数字が大きいほど(10に近いほど)息切れが強いことになり、一般的に呼吸器疾患の方の場合は3-4くらいの運動強度が推奨されています。散歩の場合、スケール3-4の「多少弱いくらいの息切れを感じる程度」の速さで歩く、ということになります。
私がリハビリでこのスケールをご紹介するときは、「0から10を思い浮かべて、だいたい3-4割くらいの息切れ具合で歩いてみてください」とお話しているのですが、イメージできますでしょうか。息切れをとても強く感じるまま歩くことはできませんが、逆に非常に弱いくらいにしか感じない程度で歩いていると運動としての効果が得られにくくなります。そのため、きつ過ぎず、かつ弱すぎない息切れ具合、つまりスケール3-4の「多少弱い」くらいで歩くことをお勧めしたいと思います。
上記は一般的にお勧めしている内容ですが、クリニックのリハビリに来られている方々は、皆さんご自分の生活パターンに合わせて歩行運動を行っている様子です。例えば、Sさんは天気の良い日は必ず30分(休憩しながらのマイペース歩行)。Tさんの場合は犬の散歩で40分(散歩コースは犬の気分次第)。Hさんはお店まで車でお買い物に出かけ、店内を見ながらゆっくり15分(夕飯の買出しを利用)。Aさんは週3回のゴミ出しのついでに近所をぐるりと10分(ご近所のお宅の花を眺めに)。「さあ歩こう!」というほうが調子が良い方もいれば、「出かけたついでに…」と気軽に取り入れている方もいます。「こうしなければいけない」という絶対の決まりはありませんので、皆さまの取り入れやすい方法を試してみてください。動ける範囲が広がると、生活の幅も少しずつ変わってくるはずです。
最後に
さて始めてから約2年間、12回シリーズにわたり栄養のお話も交えながら呼吸リハビリについてご紹介させて頂きましたが、毎回心がけていたことが二つあります。「できる限り内容が偏らないようご紹介すること」と「理学療法士がいるリハビリ室じゃないとできないことではなく、自宅でできるような運動を選ぶこと」でしたが、皆さまいかがだったでしょうか?「このくらいのことなら知っている」という方、「私には当てはまらない」という方、「もっとこうしたい」という方、さまざまな意見の方がいらっしゃるはずです。リハビリのプログラムはひとりひとりの症状や病態に合わせて設定すべきなのですが、紙面の都合上どうしても詳細なご紹介が難しく、そのぶん皆さまが「良いとこ取り」できるよう心がけていました。このシリーズのなかで一文でも参考にして頂ける内容があれば幸いです。
長くなってしまいましたが、最後に紙面をお借りしてご協力いただいた方々へお礼をさせて頂きたいと思います。 「読みましたよ」とお声掛けくださる方々、「今回も載ってるね」と言ってくださる諸先輩方、毎回この記事を校正しJ-BREATHに載せて頂いた事務局のご担当者様、何よりこの回まで読んでいただいた会員の皆さま、本当にありがとうございました。
そして、この連載を担当させて頂く機会を与えてくださった遠山さんへ。
もともとはリハビリに来られたときに遠山さんの「小林さん、リハビリの記事書いてよ」の一言から始まりました。「書いてよ」のあとの、目を細めながらの笑顔と、帰り際の「See you again!」の握手は今もはっきり覚えています。稚拙な文章で会員の皆さまのお役にたてるかどうか不安でしたが、どうにか最終回まで辿りつき、ほっとしています。遠山さん、貴重な機会を頂き、本当に感謝しております。ありがとうございました。
では皆さま、また次の機会まで、「風邪を引かんようにしとって下さいね」!
























































